言語学の論証方法のひとつである、文法性テスト(容認性テスト、言語テスト)を様々な研究領域から集める、あるいは新たに提案するためのWikiです。

叙述のスコープテストは、ある部分や要素を表すような名詞相当概念について、それがどのような物理的、抽象的な全体を前提としているかを調べるためのテストである。

大区分小区分類型対象言語水準
意味・語用認知意味論・認知文法言い回し型すべて応用

概要

観察

a. A body has two arms.
b. A hand has five fingers.
c. ?An arm has five fingers.
(Langacker 1987:119)
身体部位を述べた文として、(a)と(b)は自然であるが、(c)は不自然である。

判定

物理的、抽象的な意味で部分全体関係にあるような語句のペアを用意し、それらを、構成関係を叙述する単純な文( have 文など)に入れて自然かどうかを調べる。自然であれば、当該の部分や要素が当該の全体を前提としていると判断できる。

解説

多くの意味概念は、それを部分や要素として持つ全体を前提として理解がなされる。古くは、親族名称などの限られた語彙に関してそうした性質が積極的に論じられてきたが、Langacker の認知文法以来、あらゆる意味概念に、その背景情報として理解される適切な全体(叙述のスコープ)があることが指摘されてきた。上の例では body、arm、hand、finger といった物理的に部分全体関係にある身体部位語彙を have の項としてシンプルな文を作り、その自然さを見ることで、それぞれの部位概念がどのような全体概念を前提としたものなのかを調べている。(a)と(b)が自然で、(c)がやや不自然であるという事実は、arm は body を、finger は hand を直属の全体として想定し、finger と arm には概念上は直接の部分全体関係が想定されていないことを示している。

表現形式

判別辞
〈被判別辞〉の要素を入れ替えた文
被判別辞
物理的な構成や包含を表す文

応用

-

参考文献

  1. Langacker, Ronald. 1987. Foundations of Cognitive Grammar, vol.1; Theoretical Prerequisite, Stanford University Press.

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